日本新薬株式会社山科植物資料館館長の講話による薬用植物園見学会に参加しました
テーマは「薬草と毒草」
山菜や鑑賞用に野山へ入り、誤食で身体に異常を来す中毒事故。
なんだか他人事とは思えないですね。
例えば、
ハシリドコロと福寿草を蕗のとうと、
トリカブトとニリンソウと、
ドクゼリとセリ、
スイセンや彼岸花をニラと、
鈴蘭やイヌサフランをギョウジャニンニクと、
ヨウシュヤマゴボウの根を山牛蒡と、
などなど、誤食による中毒事故が後を絶たないようです。
また、観賞用に栽培される植物の中にも人体に有害な物質を含むものがあり、
黄色い鮮やかな花を咲かすカロライナジャスミン。
アルカロイドという人体にとって強い作用を及ぼす成分が入っていて、
名称につられて口にすると大変なことになる。
「美しい花には毒がある」
のことわざ通り。
しかしこのアルカロイドという成分は時には疾病の治療にも役立つことを、人類は見出してきて、
漢方においてはブシ(トリカブトの根)やロートの根(ハシリドコロの根)などの生薬を利用してきました。
人類は19世紀の初頭から薬草、毒草や生薬から薬効成分を科学的に単離して構造を明らかにしていく天然物化学をベースにした医薬品開発が盛んとなり、
さまざまな化合物が医薬品として開発されてきた。
けれども昨今は、生物多様性保全の問題で植物を医薬品の開発対象として扱いにくくなったり、
新しい医薬品を作り出す手法がゲノム創薬へと発展し、
小分子から中・高分子の化合物へと関心が移行したことなどで植物からの新たな薬効成分を見つけ出す医薬品研究が難しくなってきているということです。
そのような中でも、ヒガンバナ科の根茎に含まれるアルカロイドが抗アルツハイマー薬として登場したりクソニンジンという植物から発見された抗マラリア薬のアルテミシニンが2015年のノーベル生理学医学賞を受賞したり、
と植物からの新医薬品開発は続いている。
植物は自分で生まれ育つ環境を選ぶことができず、
だからこそそこにあるバクテリアやウィルス、菌類や昆虫、
人間とも戦わねばならず、
そのために備えた化学物質の生産能力。
それがまさに製薬工場のよう。
日常に目にする足元に咲く小さな花でさえ、
人間にとっては未知の力を植物たちは秘めているのではないかと
思いました。