徳島県神山町は徳島県のほぼ中央、緑の中を流れる清流と四季の変化に富んだ渓谷美を誇る鮎喰川の上流に位置する素朴な美しい町。すだちの生産では日本一を誇る。
ここでNPO法人グリーンバレーが”神山プロジェクト”と称し、過疎化の現状を受け入れ、外部から若者やクリエイティブな人材を誘致することによって、人口構成を健全化させたり、多様な働き方を実現できるビジネスの場としての価値を高めて、農林業だけに頼らないバランスのとれた、持続可能な地域を目指す活動をしている。
称して”神山プロジェクト”ではサテライトオフィスにIT,映像、デザインで働く場所を選ばない企業の誘致が行われ、2015年11月現在、12社がサテライトオフィスを設置、本社移転や新会社設立、30名の新規雇用、数年後には30程度の新たな雇用が生まれる見込み。
また、ワークインレジデンスといった町の将来に取って必要になる働き手や企業者の誘致を行い、ビストロ、カフェ、パン屋、ピザ屋、靴屋、ゲストハウス、などがすでに開業。
商店街への展開により、今までに類を見ないような中山間における商店街モデルが誕生している。
酒蔵を改装した本格的フレンチビストロ
六本木ヒルズで働いていた女性がやまと一緒に買い取り友人とオープン
当初は場所柄を考えて800円くらいのランチを提供していたが、
もっと良いものを食べさせて欲しいというまちのお客様の要望で、本格的な料理をだしはじめたという、
いっぱい2000円ほどする通なお酒も普通に出るという
さらには、厚生労働省の基金訓練、求職者支援訓練による後継人材の育成事業により、30歳前後の若者、独身女性、首都圏出身、クリエイター系の訓練生が、すでに6期77名修了しており、結果として、約50%が移住、SO就職、カップルが10組誕生した。
現在は30名が町内4企業にて5か月間の職業訓練を受講中。
徳島県上勝町は四国で一番小さな町で人口も最も少なく、高齢化率が51.60%。しかし、「葉っぱビジネス」はあまりにも有名で、元気なおばあちゃんたちや、町の魅力に惚れ込んで県内外からIターン、Uターンで移住してくる若者も多く、町の人皆が生き生きと暮らしている。
映画化もされた彩(いろどり)事業は紅葉、南天、柿、椿の葉っぱや梅、桜、桃の花などを料理のつま物として商品化したもの。軽量で綺麗な商材で女性や高齢者でも負担なく取り扱うことができる商材で、昭和61年に4軒の生産者としてスタートし、現在は約2億6000万円の販売額となり年収1000万円以上稼ぐおばあちゃんもいらっしゃるとか。
忙しくて「病院へ行く暇がない」という言葉が象徴するように2010年5月現在では上勝町では寝たきり老人はゼロ。葉っぱビジネスの仕事に日々張り合いを持って取り組んでいるから、おのずとリハビリとなり健康増進につながっているという。
上勝町の目立った活動としてはいくつかあるがもう一点をご紹介。
特定比営利活動法人ゼロ・ウェイストアカデミーが取り組む、「上勝町ごみゼロ(ゼロ・ウエイスト)宣言」が衝撃的であった。
未来の子供達に綺麗な空気や美味しい水、豊かな大地を継承するため、2020年までに上勝町のごみをゼロにすることを決意し、上勝町ごみゼロ(ゼロ・ウエイスト)を宣言している。
海外ではすでにアメリカのカリフォルニア各州、オーストラリアのキャンべラ市、カナダのノヴァスコシア州ハリファクス、ニュージーランドの70%以上の自治体など100以上の地域でごみ処理政策にゼロ・ウェイストの目標年を定めて採用。日本でも、上勝町を皮切りに、福岡県大木町、熊本県水俣市も続いて宣言を行い、東京都町田市、奈良県斑鳩町、神奈川県葉山市、逗子市、などでも「燃やさない」「埋めない」を掲げたごみゼロ政策が始まっている。
上勝町では生ゴミは全量リサイクル、ごみは徹底的に34分別し、資源集積所「ステーション」に各自が持ち込み分別する。年末年始を除き毎日7時半から14時まで受け入れを行い、都合のいい時に持ち込むことになっている。収集車はこないが、車を持たない高齢者世帯には2か月に一度、NPOが運搬支援事業として個別収集。
不用品を町内でリユースしたり、工房を作り、不要な衣類、布類をユニークな商品に制作し、販売している。
鯉のぼりに描かれた金太郎
珍しい布地の鯉のぼりをリメイクしたワインボトルケース
神山町のように、外部からクリエイティブな人材を誘致して、人口構成を健全化させ、多様な働き方を実現できるビジネスの場を創出し農林業だけに頼らないバランスのとれた持続可能な地域づくりを目指す町。
上勝町のように循環型町作り事業としてゼロ・ウェイストの取り組みをブランド化し、「見たい」「体験したい」「学びたい」「行って見たい」「住んで見たい」と思わせる仕組みづくりを作り、サスティナブルアカデミー創設、環境教育プログラムを実施する町。
創造的農山村の取り込みは、全国の注目を集め、視察に訪れる人が後を絶たない。そして視察に訪れる人々の中には学生も含まれる。過疎化に悩んでいた農村が変化を遂げたその経緯は衝撃的でかつ心地よい刺激でしたがそれは学生たちにも同様の印象を与えたようでした。